「自費出版のお役立ち情報」第5号

自費出版のお役立ち情報 第5号

「自費出版のお役立ち情報」第5号をお届けいたします。

自費出版で注意すること−10
書店流通について(1)

自費出版される皆様が、決まって希望されることが二つあります。
ひとつは、制作費を「安くしてほしい」ということ。
もう一つは、出来上がった本を「書店に置いてほしい」ということです。
制作費を安くする方法は、これまでにもそれぞれの項目で述べてきましたので、今回は出来上
がった本を書店に流通させるための方法についてご説明いたします。
まず、本がいかにして出版社から書店に配本されるかを知ってください。
本は全国にある4000社ほどの出版社から発刊されます。その本は出版社から直接全国の2
0000店ほどある書店に送本されるのではなく、一旦取次という他業種でいう問屋に集められ
ます。取次は全国に40社ほどしかありません。トーハンと日販という2大取次があり、その他
には準大手としてジュンク堂書店のメイン取次であり、図書館取次としても積極的な大阪屋が
最近では商いが盛んです。
出版社はそういった取次の何処かと取引をしていて、自社の本を全国の書店に配本してもらっ
ているのです。
 出版社(全国に約4000社)
  ↓↑
 取次(全国に約40社)
  ↓↑
 書店(全国に約20000店)
出来上がった本は出版社からまず取次に納品されます。新刊ならば取次の配本パターンがあ
り、その数字に従って全国の書店に本が配本され店頭に並ぶのです。新刊配本が売れたとき
や配本そのものが無かったときには、書店が注文を出し、その注文に従って取次はまた本を
書店に配本するのです。そして預かっている本が足りなくなったら、出版社に追加で納品する
よう指示を出します。出版社はそれに従って、追加分を取次へ送るのです。
このシステムにより、出版社は全国の書店と直接送本や売上金のやりとりをせずにすみ、取
引している取次とのみ送本や支払のやりとりをすれば良いのであって、理想的なシステムと言
えます(と書きましたが、弊害もあり、それはまたいつか時間があればご説明させていただきま
す)。
本が出版社から書店に流通する、大まかな流れはご理解いただけたでしょうか。なお、書籍流
通はそのほかにも細々とした多様な形態があり、リスクを伴いながら直接書店と取引している
出版社も実は存在します。著者が直接書店と取引する方法もあります。

本は書店に対しては委託制で納品されます。つまり、買取制とは違い、「売れなかったら返品し
ても良いですよ」という制度です。よって、書店が本を吟味する眼はそれほど厳しくなく、万一売
れなかっても「返せる」という気持ちがどこかにあります。とりあえず1冊か2冊店頭に置いてみ
ようと、出版社が営業すれば注文をくれます。(この返品の率がここ数年取りざたされていて、
売れない本のための人件費や設備費、郵送費の無駄をなくそうという、つまり返品率を下げよ
うという運動が実施されています。それは、売れない本の注文は、あらかじめしないようにしよ
うという運動です)。
本は、以上のようなシステムの中で、委託品という扱いで書店に流通しているのです。

自費出版で注意すること−11
書店流通について(2)

本が出版社から書店へ流れるシステムは、前項でご理解いただいたと思いますので、この項
では自費出版の本を書店に流通させるための方法について、いよいよご説明させていただき
ます。
自分の本を普通に書店に並べたいとお考えの方は、まず当たり前のことですが出版社から本
を出さなければなりません。他の出版窓口、例えば印刷会社から本を出しても、書店には直接
流通しません。
一方、出版社が書店に自費出版の本を流すためにはリスクを伴います。
出版社のリスクとは、取次への納品送料、取次からの返品送料、取次・書店が返品作業にか
かる手数料(返品手数料)の負担、新刊案内のチラシ制作、書店への営業費、スリップや読者
カードの制作とその封入作業、本の発送に関わる社内での経費や本を管理する倉庫費などな
どです。
これらリスクは、万単位で出版する企画出版の場合、本の売り上げから回収することを前提と
します。ところが、自費出版の場合、発行部数が少なく、かつ本はすべて著者の所有物である
という特殊な状態にあります。そこで、昔から自費出版の本は、本来書店流通には向かないも
のであるというのが大前提でした。
しかし、最近では自著を書店に置いてほしいという要望が強くなり、そのリスク分の費用を見積
もりに上乗せさせて、出版社は書店流通に対応するようになりました。
また、書店も、20年ほど前までは自費出版本などは一切扱わないという対応でしたが、最近
は大手書店などでその障壁は完全に取り払われたようです。理由は、自費出版本のレベルア
ップや、他店にない本を扱いたいという書店の思いなど様々なようです。(それと忘れてはいけ
ません! 本は委託扱いであると言うことを! もし、本が委託扱いでなくなった日には、再び
自費出版本は書店から閉め出されるでしょう)。
さて、話は長くなりましたが、自費出版の本を書店に流すためには、(まずその内容が自己満
足ではなく一般の読者にも訴える内容であることが肝心ですが)出版社が負うリスクを著者も
負担する条件を提示することが必要です。
すなわち「書籍管理費(名称は各社様々)」なるものを出版社が著者に提示し、それを著者が
払えば出版社は前向きにその本を書店流通させることになります。書籍管理費の計上方法
は、出版社によってまちまちで基準がありません。定額で提示したり、定価の何%×冊数とい
う決め方をするところもあります。それらは、見積もりの段階で提示される場合もありますが、
制作の途中で内容が書店販売に堪えれるレベルに達することにより、追加費用として請求さ
れるケースも多くあります。
これらのことを理解した上で、自費出版の本を書店流通させたい人は、出版社と書籍管理費
を負担することで掛け合ってみてください。

最後に単に書店に本を並べるだけで自己満足に終わるケースとして、賛否両論がありますが
面白い試みを紹介します。出版社が書店の棚を(その棚を自社の本で独占するために)毎月
お金を払って買っている(=契約している)場合があります。書店にとっては、例え1冊もその棚
から本が売れなくても、お金が出版社から入るわけですから損をしない仕組みになっていま
す。しかし、本の立場から言うと読者の方に買っていただいて書店に貢献しているのではなく、
見せ物として存在しているだけなので可愛そうな存在です。売れれば良いのですが、たいがい
そのような棚はいろいろなジャンルの本が隣り合わせになっており、単にその出版社のPRに
使われているだけのようです。出版のサイクルが早いため、1ヶ月間その棚に並んだ後に、飾
りとして使われて本は返品される運命のようです(返品が著者まで戻らない悪質なケースもあ
るようなので注意が必要です)。


第5号 了

引き続き第6号をお読み下さい

「自費出版のお役立ち情報」第6号
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